Columnマンション経営コラム

賃貸の立ち退きを依頼する方法まとめ|立ち退き料や手順を詳しく解説

2021.09.26

賃貸の立ち退きを依頼する方法まとめ|立ち退き料や手順を詳しく解説

「アパートが老朽化して維持が大変だから、入居者に立ち退きをお願いしたい」
「家族と一緒に住む場所が欲しいため、入居者に立ち退いて欲しい」

貸主の判断で賃貸の立ち退きをお願いしたいと思うケースは、意外と多いものです。

しかし、賃貸の立ち退きはどのような場合でも簡単にお願いできるわけではありません。賃貸の立ち退きを依頼するには、借地借家法で定められている「正当な事由」が必要です。

正当な事由に加えて、特別な場合を除いて借主に適切な立ち退き料を支払うことも定められています。このような立ち退きの条件を把握せずに立ち退きを迫るとトラブルになり、最悪の場合裁判所で争うことになります。

スムーズに賃貸の立ち退きを依頼するためにも、正しい知識や手順を把握しておくことが欠かせません。

そこでこの記事では

◎賃貸の立ち退きを依頼するには正当な事由が必要
◎4つの正当な事由
◎賃貸の立ち退き料の算出方法
◎立ち退きが不要となる3つのケース
◎賃貸の立ち退きを依頼する手順
◎実際に起きた立ち退きでのトラブル事例
◎スムーズに賃貸の立ち退きを依頼するための3つのポイント

をまとめてご紹介します。最後まで読めば賃貸の立ち退きをお願いするときの条件や費用、手順が把握でき計画的に立ち退きを進められるようになるはずです。

賃貸の立ち退きではトラブルが多いため、事前に知識を身につけてできる限りトラブルを回避し実施できるようになりましょう。

1.賃貸の立ち退きを依頼するには正当な事由が必要

貸主がアパートやマンションなどの賃貸入居者に立ち退きを求める場合には、正当な事由が必要です。これは、借地借家法で契約更新を拒否する場合には正当事由が必要と述べられているからです。

建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件

第二十八条
建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
引用:地借家法 第二十八条

そのため、貸主の都合のみで勝手に立ち退きを迫ることは法律上禁止されています。では、どのようなものか「正当な理由」に当てはまるのか次の章で詳しくご紹介します。

【旧借地法が適用されても、基本的な考え方は変わらない】

借地借家法は借地法に代わる法律として、1992年8月1日より施行されました。

1992年7月31日よりも以前より締結された借地権は更新契約をしたとしても、旧法である借地法が適用されます。

ただし、借地法であっても立ち退きに関する考え方や正当な事由、立ち退き料の解釈は基本的に借地借家法と同じです。借地借家法を理解することで、どの年代に建てられた建物であっても立ち退きに関する正しい知識を得られます。

2.賃貸立ち退きの正当な事由は次の4つ

賃貸の立ち退きを依頼するときの正当事由とは、貸主が借主に住居の明け渡しを求められる常識的な理由を指します。

具体的には、借地借家法第二十八条の「建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況」という部分に該当します。

正当な事由は4つに分けられますが、どれか1つに当てはまれば問題ありません。

ただし、正当な事由の解釈やどのようなことが正当な事由に当てはまるのか判断するのは難しいため、あらかじめ弁護士などの専門家に相談し正当な事由に当てはまるのか確認しましょう。

それぞれどのような事由を意味しているのか具体的に解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。

2-1.貸主の自己利用(建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情)

貸主の自己利用とは、借主に貸している物件を貸主自らが利用することを指します。

貸主の自己利用を事由とする場合には、「居住の必要性」「経済的困窮」「営業の必要性」という3つの事情のずれかを主張する必要があると考えられています。

①居住の必要性
貸主や貸主の家族、貸主が雇っている従業員など密接な関係になる第三者が住む必要性を主張するパターンです。

例えば、貸主が高齢で介護が必要となり家族と同居するために、立ち退きを求める場合が当てはまります。

②経済的困窮
貸主の経済状況が悪化し、死活問題となっていることを主張するケースです。例えば、経済状況が悪化しアパートにも空室が多いことから、貸しビルにして収入を確保しようと試みる、アパートやマンションを売却することが該当します。

③営業の必要性
貸主自らが商売などの営業活動をするために、立ち退きを求めるパターンです。経済的な困窮と重なることで緊急性が高まり、容認させる傾向があります。

例えば、貸主が病院を営むために建物を探していたところ他の物件ではなかなか開業が難しく、立ち退きを求める場合が当てはまります。

このように、貸主が何らかの事情で自分や家族で利用することは正当な事由に当てはまることがあります。

2-2.賃貸の契約内容や経過(建物の賃貸借に関する従前の経過)

どのような内容で賃貸契約を結んでいるのか、借主がどのように住んでいるのかによって正当な事由となり得ます。

賃貸契約時に取り壊し計画や売却予定など立ち退きが想定される計画が提示されていた場合は、立ち退きが認められやすくなります。

また、賃貸契約後に借主が契約違反を起こしていると正当な事由となる場合があります。例えば、

・賃料を滞納している
・用法違反がある(騒音トラブルや勝手な改築など)

といった場合は借主に非があるため、賃貸契約に反しているとして立ち退きが認められるケースがあります。

2-3.建物が老朽化している(建物の現況)

アパートやマンションなどの建物が老朽化してこれ以上住み続けると危険を伴う場合は、借主に立ち退きを求める事由となることがあります。

・建物が老朽化しており倒壊の危険性があり、補強工事が必要
・耐震性能に問題がある

といった場合は生命に関わる可能性があるので、立ち退きが認められるケースがあります。

一方で、「見栄えをよくするためリフォームをしたい」「入居者アップのため雰囲気を一新したい」という場合は緊急性に乏しいため、正当な事由として認められないことが多いです。

2-4.建物を本来の目的で利用していない(建物の現況)

住居専用のアパートやマンションを倉庫代わりに利用している、勝手に人に貸しているなど本来の目的とは異なる用途で利用されている場合は、正当な事由として認められることがあります。

また、稀なケースではありますが賃貸をしているにもかかわらず利用されていない場合も、立ち退きを求める正当な事由となることがあります。

3.正当な事由で立ち退き依頼をするには「立ち退き料」が必要

立ち退きは、第1章でご紹介したような正当な事由さえあれば認められるわけではありません。

借地借家法の第二十八条に「財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない」と記載されているように、正当な事由と適切な額の立ち退き料がセットで必要なのです。

いくら正当な事由があっても立ち退き料が不要となるケースでない限りは、借主に対して立ち退き料を支払う必要があります。

立ち退き料とはいくらくらいかかるのか、次の章でご紹介します。

4.立ち退き料の2種類の算出方法

貸主が借主に支払う立ち退き料は、正当な事由やさまざまな事情によって大きく異なるため一概にいくらとは言えません。

目安となる立ち退き料なら、下記の2つの方法で算出できます。

立ち退き料としていくらくらい支払わなければならないのかはチェックしておきたいポイントなので、算出方法を詳しくご紹介します。

4-1.立ち退きに伴う費用を補償する方法

まずは、賃料の立ち退きをするために借主が負担しなければならない費用を立ち退き料として支払う方法です。

どのような費用を含めるのかはケースにより異なりますが、主に下記の2つの費用が負担対象となります。

①引っ越しのためにかかる費用
借主が立ち退きをするためには、引っ越しをしなければなりません。そのときに必要な引っ越し費用を負担します。

②現在の家賃と引っ越し先の家賃との差額分
立ち退きをして引っ越すことで家賃が高くなる場合は、その差額分を負担します。負担期間は裁判での判例を見てもばらつきがありますが、2~3年分を支払うケースが多いです。

例えば、一戸当たり

①引っ越しのためにかかる費用:20万円
②現在の家賃と引っ越し先の家賃との差額分:現在より家賃が2万円高くなるとして2年分支払うと48万円

30万円+48万円=78万円となり、一戸当たり78万円を立ち退き料として支払います。

ただし、アパーやマンションが事業用物件である場合は、立ち退きによる事業の損失分も補償しなければなりません。

4-2.借地権価格を支払う方法

借地権価格とは、立ち退きにより借主はアパートやマンションを借りているという財産的価値を失うことになるためその補償にあたる価格のことです。

借家権価格=更地価格×借地権割合×借家権割合で算出できるので、どのように計算をするのか一つずつチェックしていきましょう。

①更地価格
路線価は公示価格の8割を目安に設定されていますので、路線価を1.25倍して更地価格を求める方法があります。
この方法を用いる場合に、更地価格は、路線価×土地の面積で算出できます。
路線価を知るには国税庁の路線価図・評価倍率表を開いて、住まいの都道府県をクリックします。

目次が表示されたら、一番上の「路線価図」をクリックします。

市や区が表示されるため、住んでいる地域を選んでいきます。

地図が表示されるため、アパートやマンションなどの建物がある場所を探します。アパートやマンションなどの建物がある区画の近くに表示されている数字が路線価です。

路線価は、1㎡あたり千円単位で記入されています。上記の黄色に囲ってある部分「500D」は1㎡あたりの路線価が500,000円となります。(アルファベットを除いて算出します)

例えば、敷地面積が200㎡あるアパートの場合は、500,000円 × 200㎡=1億となり1億円が更地価格となります。

ここで算出した更地価格はマンションやアパート全体を対象としているため、最終的には1戸あたりの価格を算出します。

②借地権割合
借地権割合とは、建物の価値に占める借地権の割合のことです。

借地権割合は、先ほど路線価図・評価倍率表で検索をして開いた地図上で確認できます。注目すべきは、数字の後ろについているアルファベットです。「500D」の場合、アルファベットは「D」となります。

地図のページの右上に借地権割合が記載されているので、アルファベットの割合を見てみます。下記のように「D」の場合は60%となるため、借地権割合は60%となります。

③借家権割合
借家権割合とは、建物の価値に占める借家権の割合のことです。

借地権割合も路線価図・評価倍率表で確認できます。目次のページまで戻ったら、2項目の「土地関係以外」にある借家権割合をクリックします。

次のページで、建物がある都道府県の借家権割合が表示されます。東京都の場合は30%と記載されているため、借家権割合は30%となります。

ここまで計算をしてきて

①更地価格:1億2500万円
②借地権割合:60%
③借家権割合:30%

となりました。これを最初に紹介した借家権価格 = 更地価格 × 借地権割合 × 借家権割合に当てはめます。

1億2500万円 × 0.6 × 0.3 = 2,250万

これはアパートやマンションなど建物全体の借地権価格となるため、1戸当たりの借地権価格が知りたい場合は戸数で割ることになります。

例えば、10戸ある場合は2,250万÷10=2,250万となり、1戸当たり225万円を立ち退き料として支払うことになります。

借地権価格はあくまでも目安となるものなので、状況や条件により左右することを念頭に置いて目安としてみてください。

また、状況によっては引っ越し費用などの立ち退きに伴う費用補償と借地権価格のどちらも支払うことがあるので負担額が高額となる可能性があります。

5.立ち退き料が不要となるケースは?

貸主には大きな負担となる立ち退き料ですが、

・借主が契約違反をしている場合
・定期借家契約となっている場合
・賃貸借契約書に「取り壊し予定」と記載されている場合

という3つのケースでは、立ち退き料が不要となる可能性があります。どのようなケースなのか具体的にご紹介します。

5-1.契約違反がある場合

借主が家賃の滞納や使用用途違反など賃貸契約に違反している場合は、下記の民法541条が適用されます。

催告による解除

第五百四十一条
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。

引用:民法第五百四十一条

貸主が借主に対し家賃の支払いなども催告をしても履行されない場合は一方的に契約解除ができるので、借地借家法を適用する必要がありません。

そのため、貸主は立ち退き料の支払いが求められないのです。

第4章でご紹介をする立ち退きの判例でも、借主が家賃滞納をしていた場合は立ち退き料の支払いが要求されていません。

このように、借主の契約違反により立ち退きをお願いする場合は、立ち退き料が不要となることがあります。

5-2.定期借家契約となっている場合

貸主の物件が定期借家契約となっている場合は、立ち退き料が発生しない場合があります。

定期借家契約とは契約更新がなく定められた期間が満了したら、確定的に契約が終了する賃貸借契約です。つまり、定期借家契約で2年と定められていた場合、2年の満了時に立ち退きをお願いすれば契約通りの対応となるのです。

ただし

・定期借家契約の途中での立ち退き
・定期借家契約であることを明記されていない
・定期借家契約である明確な説明がされていない

という場合は立ち退き料が発生するため、注意しましょう。

5-3.賃貸借契約書に「取り壊し予定」と記載されている場合

建物が取り壊し予定となっており、取り壊しを機に賃貸契約が終了することを賃貸契約時に明記して説明している場合は立ち退き料が発生しません。

そもそも、賃貸契約段階で取り壊しと同時に賃貸契約が終了することが決まっているからです。

ただし

・定められている賃貸契約期間内での立ち退き
・契約時に建物の取り壊し理由や取り壊し時期が明確に説明されていない
・建物の取り壊しの理由が都市開発など正当な理由となっていない

という場合は立ち退き料は必要となるため、契約時にしっかりと説明されているかどうかが鍵となります。

6.賃貸の立ち退きの手順

借主に賃貸の立ち退きをお願いする場合は、下記のような手順で行います。

具体的にはどのようなことをしなければならないのか、一つずつ見ていきましょう。

6-1.立ち退き通知書を送付する

まずは、立ち退きしてほしい借主に立ち退き通知書を送付します。立ち退き通知書を送付するときの注意点は2つあります。

①送付期限
立ち退き通知書の送付期限は、借地借家法二十六条一項で下記のように定められています。

建物賃貸借契約の更新等

第二十六条一項
建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。

引用:地借家法 第二十六条

つまり借主の契約期間が満了となる1年~半年前までには立ち退き通知書を送付しないと、法律違反となり無効になる可能性があります。できるだけ早い段階から、立ち退き計画を立てて動くようにしましょう。

②立ち退き通知書の内容
立ち退き通知書は借主に初めて立ち退きを伝える書類となるため、中途半端な内容だと言いたいことが伝わらないことがあります。定められた形式はありませんが

・賃貸の立ち退きを完了させたい日時
・立ち退きの正当な事由
・立ち退き料
・返答期限
・署名、捺印

は記載するようにして、確実に本人の手元に届く方法で送付しましょう。

6-2.借主に口頭で説明をする

借主に立ち退き通知書送付したら、具体的な立ち退きの経緯や立ち退きの条件などを直接説明しましょう。書面だけでは納得できずに直接説明をすることで、承諾を得られる可能性があるからです。

借主に口頭で立ち退き内容を説明する場合も

・立ち退きを完了させたい日時
・立ち退きの正当な事由
・立ち退き料
・納得してもらえるかどうか

を中心に話していくといいでしょう。この段階で借主の承諾を得られない場合は、立ち退き料の交渉へと移ることになります。

6-3.立ち退き料や条件の交渉をする

貸主が提示した事由や立ち退き料で納得してもらえない場合は、借主との間で立ち退き料や条件について交渉をすることになります。

例えば、

・引っ越し代も貸主が負担するようにする
・引っ越し日を借主の要望に合わせる

など条件を緩和することで、借主の承諾が得られる場合があります。

しかし、借主と貸主の間で折り合いがつかずにトラブルが発生するケースも少なくありません。どうしても折り合いがつかない場合は、最終的に裁判で争うことになります。

6-4.借主が立ち退きを承諾し立ち退きをする

立ち退きに対して借主の承諾が得られた場合は、具体的に立ち退きの手続きを開始します。

まずは、書面で立ち退きの承諾したことの同意を交わして具体的に立ち退きを進められるようにします。

借主によっては意見が何度も変わり「やっぱり立ち退きしない」という可能性も充分にあるので、立ち退きを承諾した時点で書面にて締結するようにしましょう。

賃貸の立ち退き日までにスムーズに引っ越しをしてもらうために、引っ越し先の紹介や引っ越し業者の紹介などを行うこともあります。

ここでは基本的な立ち退きの手順をご紹介しましたが、貸主が依頼する立ち退きは一筋縄ではいかないことが多いです。

次の章では、立ち退きをお願いすることでどのようなトラブルが起こるのか裁判所の判決事例をご紹介します。

7.【裁判所での判決は?】賃貸立ち退きでのトラブル事例

全ての借主ががすぐに立ち退きに承諾してくれるわけでなく、折り合いがつかない場合も多々あります。

ここでは実際の裁判の判決を基に、

・老朽化に伴う立ち退きを要求した後に立ち退き料が増額した判例
・賃貸未払いによる立ち退きを要求した判例
・建物の老朽化を事由に立ち退きを求めたが否認された判例

という3つの判例をご紹介します。具体的なトラブルの判例を見て、参考にしてみてください。

7-1.老朽化に伴う立ち退きを要求した後に立ち退き料が増額した判例

貸主が所有する建物は築95年以上が経過しており、一部補修はされているものの耐震面を考えると危険が伴う状態でした。そこで建物の老朽化を事由として、借主に賃貸借契約の解除と建物の明け渡しを求めました。

原審では立ち退き料の支払いと条件に貸主の請求が認容されたので借主が控訴したところ、立ち退き料を増額して立ち退きが認められることに。

立ち退き料増額の理由としては、貸主が高齢者なのでこれから本格的な修繕をすることが難しいことを考慮しつつも借主に不利益が生じることが見逃せないとして増額に至ったようです。

最終的には原審の立ち退き料175万円に40万円を増額した215万円を支払うこととなり、老朽化が事由であっても一定額の立ち退き料が請求される事由だと言えます。

参考:最近の判例から13−正当事由−

7-2.賃貸未払いによる立ち退きを要求した判例

4ヶ月もの間、借主が支払うべき賃料等が未払いとなっている物件がありました。貸主は建物の賃貸借に関する従前の経過を事由として、立ち退きと未払賃料等の支払いを求めました。

しかし、借主はエアコンが不具合を起こし建物が通常使用できない状態にあったことや貸主が借主に営業妨害等をしていたと主張。その結果、賃料等の支払いを否定し、貸主の請求の破棄や損害金を求め反訴しました。

判決では営業妨害等に当たる充分な証拠がないとして借主の請求が全部棄却され、貸主についてはエアコンが不具合を起こしていた期間のみ賃料等を免除するよう言い渡されました。家賃の滞納という契約違反があったため、立ち退き料は不要となった判決例となります。

参考:最近の判例から12−設備の不具合と賃料支払義務−

7-3.建物の老朽化を事由に立ち退きを求めたが否認された判例

建物が築45年を経過したことで老朽化が進み朽廃や倒壊の恐れがあるとして、貸主は借主に契約解約と立ち退きを求めました。建物は耐震診断を受けており、その結果では大地震が起きたときに倒壊する危険性が高いというものでした。

しかし、借主は建物が倒壊にないような補修工事の実施を求めました。裁判では

・建物が傾斜しているものの劣化が進行している証拠が不十分
・貸主には補強工事や補修工事を行う義務がある
・建物内には飲食店などの施設があり、長年に渡り営業してきたことを考えると使用収益に必要な修繕義務がある

として貸主の解約の申入れや正当な事由を否定し、補強工事の実施を命じました。

建物の老朽化は正当な事由として認められる一つではありますが、借主が建物を必要とする事情によっては認められないケースがある判例だと言えるでしょう。

参考:最近の判例から13-解約の正当事由-

8.賃貸の立ち退きをスムーズに進めるための3つのポイント

立ち退きの判例からも分かるように立ち退きの交渉は借主に大きな過失がない限り、とても難しいものです。最後に、賃貸の立ち退き交渉をできる限りスムーズに進めるための

・弁護士など専門家に相談する
・入居者とコミュニケーションが取れるようにしておく
・立ち退きを進めるためのスケジュールや記録をしっかりと残す

という3つのポイントをご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

8-1.弁護士など専門家に相談する

賃貸の立ち退き依頼は、借地借家法や民法をはじめ法律が関わってくる場面が多いです。任意で交渉を進めたときに

・立ち退き通知書を送付する時期
・正当な事由であるかどうかの判断
・立ち退き料の相場

などを誤ると大きなトラブルに発展し、裁判になったときに貸主側の主張が受け入れられない可能性があります。

スムーズな立ち退きが実現するためにも、あらかじめ弁護士やコンサルティング会社などの専門家と一緒に進めることがおすすめです。

立ち退きを検討し始めた段階で

・立ち退き料はいくらくらいかかるのか
・そもそも立ち退きを依頼することは可能なのか

把握するためにも、弁護士や専門家の力を借りて計画的に進めていきましょう。

8-2.借主とコミュニケーションが取れるようにしておく

日頃から借主とコミュニケーションが取れる状態にしておくことも重要です。双方の関係性が崩れていると立ち退き料交渉などでトラブルが起こりやすくなります。

また、日頃からコミュニケーションが取れていれば使用用途違反や迷惑行為などの契約違反にも気付きやすく、他の借主に悪影響が出る状態で放置することも少なくなります。

どのような人が住んでいるのか把握しておくのはもちろんのこと、定期的に「困っていることはないか」「住み心地はどうか」などの会話をしていつでも話ができる状態にしておくといいでしょう。

8-3.立ち退きを進めるための記録をしっかりと残す

賃貸の立ち退き依頼を進めるときには、スケジュールや借主との交渉内容を細かく記録するようにしましょう。

第4章でも説明したとおり、立ち退き交渉はなかなかスムーズには進みません。最悪の場合は裁判所にて争うことになることを前提に行動する必要があります。

立ち退きを進めるうえでの記録を残しておくことで

・借主とどのような交渉をしてきたのか
・どのような部分で意見が食い違っているのか

などの証拠となり、いざという時に役に立ちます。できれば1冊のノートを作り、細かく立ち退き依頼の経緯をまとめておくと安心です。

9.まとめ

いかがでしたか?賃貸の立ち退き依頼をするときの条件や手順、注意点が把握でき、実際に立ち退き依頼をする具体的な計画ができるようになったかと思います。

最後にこの記事の内容をまとめてみると

◎貸主がアパートやマンションなど賃貸の入居者に立ち退きを求める場合には、正当な事由が必要

◎正当な事由とされるのは次の4つ
1)貸主の自己利用(建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情)
「居住の必要性」「経済的困窮」「営業の必要性」のいずれかの事情で、借主に貸している物件を貸主自らが利用する
2)賃貸の契約内容や経過(建物の賃貸借に関する従前の経過)
借主が契約違反を起こしている場合や契約内容に「取り壊し予定」など立ち退きが必要な事情が記載されている
3)建物が老朽化している(建物の現況)
アパートやマンションなどの建物が老朽化している
4)建物を本来の目的で利用していない(建物の現況)
本来の目的とは異なる用途で利用されている

◎正当な事由と適切な額の立ち退き料がセットで必要となる

◎賃貸の立ち退き料の目安を算出する方法は次の2つ

1)立ち退きに伴う費用補償:引っ越し費用などを支払う
2)借地権価格を支払う:借家権価格=更地価格×借地権割合×借家権割合に当てはめて算出

◎賃貸の立ち退き料が不要となるケースは次の3つ

1)借主が家賃の滞納など契約違反をしている場合
2)契約時から定期借家契約となっている場合
3)賃貸借契約書に「取り壊し予定」と記載されている場合

◎賃貸の立ち退きを依頼する手順は次のとおり

1)立ち退き通知書を契約満了の1年~半年前までに送付する
2)借主に口頭で説明をする
3)借主の承諾を得られない場合は、立ち退き料や条件を交渉する
4)借主から承諾を得たら、指定日までに立ち退きしてもらう
全ての借主ががすぐに立ち退きに承諾してくれるわけでなく、折り合いがつかない場合も多々ある

◎賃貸立ち退きので実際のトラブル事例は次の3つ

1)老朽化に伴う立ち退きを要求した後に立ち退き料が増額した判例
2)賃貸未払いによる立ち退きを要求した判例
3)建物の老朽化を事由に立ち退きを求めたが否認された判例

◎賃貸の立ち退き交渉をできる限りスムーズに進めるためのポイントは次の3つ

1)賃貸の立ち退きを検討する段階から、弁護士など専門家に相談する
2)入居者とコミュニケーションが取れるようにしておく
3)立ち退きを進めるためのスケジュールや記録をしっかりと残す

この記事をもとにできる限りトラブルを避けながら、スムーズに賃貸の立ち退きを進められるようになることを願っています。

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