Columnマンション経営コラム

借地権者が底地を買い取るときの限定価格や買い取り手順を詳しく紹介

2021.09.26

借地権者が底地を買い取るときの限定価格や買い取り手順を詳しく紹介

「地代を支払い続けるのがもったいないから、底地を買い取りたいと思っている」
「底地を買い取って建物も土地も一括して管理できるようにしたい」

地主に地代を払い土地を借りている状態の底地を買い取りたいと考えている借地権者は、意外と多いものです。

しかし、借地権者が底地を買い取りたいと思っても一筋縄ではいかないことが多いです。底地の所有者はあくまでも地主にあるので、地主の承諾がないと前に進めません。

それだけでなく、底地を買い取るときには手順や注意点、コストをしっかり把握しておかないと、地主との間でトラブルになる、底地の価格が思ったよりも高く大きな負担になるということが起こります。

デリケートな問題だからこそ、底地を買い取りたいと思ったときに正しい知識を身につけて検討することが欠かせません。

そこでこの記事では

借地権者が底地を買い取るときには限定価格が採用される
限定価格の目安を算出する方法
借地権者が底地を買い取るときの手順
借地権者が底地を買い取るときの3つの注意点

をまとめて解説していきます。最後まで読めば借地権者が底地を買い取るときの手順や価格、注意点が把握でき、底地の買い取りを進めるべきか判断できるようになるはずです。

トラブルを避けて底地の買い取りを検討するためにも、ぜひ参考にしてみてください。

1.借地権者が底地を買い取る場合は限定価格が採用される

底地を借りている借地権者が底地を買い取る場合は、限定価格が採用されます。(例外もあります)

限定価格とは、底地を正常価格よりも高く買い取る価格のことです。

国土交通省が公表している「不動産鑑定評価基準」には不動産の鑑定評価の基準が記載されていますが、限定価格については下記のように説明されています。

不動産鑑定評価基準

限定価格
限定価格とは、市場性を有する不動産について、不動産と取得する他の不動産 との併合又は不動産の一部を取得する際の分割等に基づき正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することにより、市場が相対的に限定される場合における取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を適正に表示する価格をいう。

限定価格を求める場合を例示すれば、次のとおりである。
(1)借地権者が底地の併合を目的とする売買に関連する場合

引用:国土交通省「不動産鑑定評価基準」

簡単に言うと、借地権者が底地を買い取る場合は通常の底地の買い取り価格にお金をプラスしても経済合理性が取れるので特別価格が採用されると記載されています。

借地権者が底地を買い取ると土地の所有者になり、建物と土地をまとめて自分の財産にできます。

不動産買取業者などの第三者が底地を買い取っても借地権はなく土地を自由に利用することはできないため、借地権者が買い取るからこそ土地と建物を一度に所有でき資産価値が高められるメリットが生まれます。

このようなメリットが付加価値となり、底地を買い取るときの価格に反映されているのです。

次の章で詳しく説明していきますが、限定価格は底地の通常価格と更地価格の差額を算出し借地権者への貢献度などを総合的に判断しながら算出されます。

まずは、借地権者が底地を買い取る場合には限定価格が採用されることを把握しておきましょう。

2.限定価格の目安を算出する方法

借地権者が底地を買い取る場合に採用される限定価格は、底地の通常価格-更地価格で算出した差額分を底地の通常価格に上乗せした価格のことです。

差額分の何割を上乗せするのかはケースにより異なるため一概には言えませんが、底地の通常価格と更地価格を把握できるようにしておくとどの程度の価格で買い取ってもらえるのかの目安となります。

ここでは、底地を買い取るときの限定価格をどのように算出していくのが詳しく説明していきます。

2-1.更地価格を確認する

まずは、底地が更地になった場合の価格を算出します。

路線価は、公示価格の8割程度を目安に設定されているため、路線価を1.25倍して更地価格を求める方法があります。
この方法によると、更地価格は、路線価×1.25×土地の面積で算出できます。
路線価を確認するには国税庁の路線価図・評価倍率表を開いて、底地がある都道府県をクリックします。

目次が表示されたら、一番上の「路線価図」をクリックします。

市町村が表示されるので、底地がある地域の市町村を選択します。

地図が表示されたら、底地がある土地を探します。底地がある区画の近くに表示されている数字が路線価です。

路線価は1㎡あたりの価格が千円単位で記入されています。上記の黄色に囲ってある部分は「110D」なので、1㎡あたりの路線価が110,000円となります。(アルファベットを除いて算出します)

例えば、底地の敷地面積が60㎡ある場合は、110,000円×60㎡=6,600,000円となり6,600,000円が更地価格となります。

2-2.底地の評価額を算出する

底地の通常価格の目安となるのが、底地の評価額です。通常価格は市場や底地の状況などを考慮しながら査定する価格なので不動産鑑定士など専門家しか算出できませんが、目安となる底地の評価額は

更地価格×(1-借地権割合)

で算出できます。

更地価格の算出方法は先ほどご紹介したので、新たに必要となる数値は借地権割合です。借地権割合とは建物の価値に占める借地権の割合のことです。

更地価格を把握するときに使用した路線価図・評価倍率表の地図ページを見れば、簡単に把握できます。先ほどチェックした路線価の末尾にはアルファベットがついています。

これが底地の借地権割合を表しているのです。下記の場合は「110D」なので借地権割合はDとなります。

アルファベットを把握した状態で地図ページの右上を見ると、下記のようにアルファベットごとの借地権割合が記載されています。

Dの場合は60%なので、借地権割合は60%となります。これを先ほどご紹介した更地価格×(1-借地権割合)に当てはめてみると

①更地価格:8,625,000円
②借地権割合:60%

になります。更地価格×(1-借地権割合)に当てはめてみると
8,625,000円×(1-0.6)=3,300,000となるので、底地の評価額は3,300,000円です。

2-3.限定価格の目安を算出する

限定価格は、底地の通常価格-更地価格で算出した差額分を底地の通常価格に上乗せします。底地の通常価格を明確に算出することは難しいため、ここでは先ほど算出した底地の評価額が利用して目安を算出します。

①更地価格:8,625,000円
②底地の評価額:3,300,000円

8,250,000円-3,300,000円=4,950,000円なので、差額は4,950,000円となります。

限定価格では4,950,00円がそのままプラスされる場合もあれば4,950,00円の何パーセントかがプラスされる場合もあります。

そのため、今回のケースの限定価格は2,640,000円以上で最大4,950,00円がプラスされる可能性があることになります。

このように、借地権が底地を買い取るときの目安となる金額を把握しておくことで、資金的に底地を買い取ることはできるのか判断する基準ができます。

3.借地権者が底地を買い取る手順

借地権者が底地を買い取る手順はさまざまなケースがあるため一概には言えませんが、基本的な手順は下記のようになっています、

借地権者が底地を買い取るときには、どのように進めていけばいいのかぜひ参考にしてみてください。

3-1.地主または不動産会社に相談する

まずは、底地を買い取りたいことを底地の所有者である地主か不動産会社に相談します。

地主と以前から「底地を買い取って欲しい」「底地を処分したい」など底地の買い取りに同意を示す話をしている場合は、直接地主に相談をしても問題ないでしょう。

初めて地主に相談する場合は借地権者が一人で話をしにいくと、断られたりトラブルになったりする可能性があるためおすすめできません。

また、底地の買い取りには借地借家法や民法などの法律が関わってくるため、借地権者が一人で判断できないことが多いです。底地の買い取りを検討し始める段階から専門家に相談するようにしましょう。

3-2.底地の査定や境界線の測定を行う

底地の買い取りを進めると決めたら、底地の査定や境界線の測定を行います。

借地権がある部分と底地の面積が同じだとは限らないため、正確な底地の情報を確保した上で査定を行います。第1章でご紹介したように借地権者が底地を買い取る場合は、基本的に限定価格が採用されます。

専門家に査定してもらい買い取り額が分かったところで、このまま進めるのか判断することも可能です。思ったよりも高くなる場合は、底地を買い取るための資金調達を検討する場合もあります。

3-3.売買契約の内容を調整する

不動産会社などの専門家とともに買い取り価格や条件などをまとめて、地主に相談をします。

売買契約の内容を話し合うことで底地の買い取りができそうな場合は、そのまま話を進めていきます。場合によっては

・先祖代々の底地なので売れない
・そもそも地主に売却する意思がない
・借地権の契約更新まで売れない

など、交渉が難しくなることも多々あります。底地は地主に所有者がある土地なので、地主の承諾がなければ話を進められません。必ずしも底地の買い取りができるのは限らないことを、念頭に置いておきましょう。

【不動産会社が間に入り一時的に買い取りをする事例も】

地主と借地権者の間で話がまとまらずなかなか前に進めない場合は、底地の買い取りを行っている不動産会社が一時的に買い取るケースがあります。

借地権者は不動産買い取り業者から底地を買い取ることになるため、大きなトラブルを避けられるでしょう。その分費用がかさむ可能性があるので、一時的に不動産に買い取りをお願いしたい場合はコストを考えて検討するといいでしょう。

3-4.双方の同意が得られたら契約

地主と借地権者の双方の同意が得られたら、売却契約の内容を確認して売買契約書を締結します。後からトラブルにならないように、

・登記手続きの費用や期限
・底地の売買代金や支払い方法
・借地権者が買い取る底地の面積や範囲

を明確にして紙面にて記録を残すようにしましょう。

3-5.所有者の登記変更を行う

売買契約書で明記した期日までに、地主は底地の登記変更を行います。登記変更が終了し底地の所有者が借地権者になった時点で、借地権者が所有する土地となります。

登記変更が終了した時点で地主と借地権者という関係性が解消されるため、賃料の支払い等も不要です。

今回ご紹介した手順は一例で、地主の意思や借地権者と地主との契約内容によって買い取りかかる時間や必要な手順が異なります。

底地の所有者はあくまでも地主なので、無理に進めようとすると大きなトラブルにつながります。不動産業者などの専門家と話し合いながら、進めていくようにしましょう。

4.借地権者が底地を買い取るときの注意点

借地権者が底地を買い取るときの注意点として

・地主が必ずしも承諾してくれるとは限らない
・トラブルにならないよう条件や境界線は明確にしておく
・底地を買い取ることで固定資産税や都市計画税の支払いが発生する

という3つが挙げられます。底地の買い取りを進める前にチェックして、スムーズに進められるようにしましょう。

4-1.地主が必ずしも承諾してくれるとは限らない

借地権者が底地を買い取るには、地主の承諾が得られるかどうかが最も重要なポイントです。第3章でもご紹介したように底地の所有権は地主にあるので、地主の承諾が得られないと買い取りができません。

底地を買い取りたいという気持ちが強くても「どうしても底地は売れない」という意思がある地主の場合は、諦めるしかないでしょう。

底地は更地とは異なり取り扱いが難しく、思ったように買い取れないケースは多いです。借地権者が底地を買い取りたいと思ったときに、必ずしも買い取れるとは限らないことを頭の片隅に置いておいてください。

4-2.トラブルにならないよう条件や境界線は明確にしておく

借地権者が底地を買い取るときには、トラブルにならないように条件や境界線を明確にしておきましょう。

①境界線
借地権を所有している部分の面積と、地主が所有している底地の面積は同じだとは限りません。

下記のように、借地権がある土地に隣接している土地の底地も同じ地主の底地である可能性があります。

底地の面積や状況を正しく把握してないと適切な面積での査定ができず、トラブルになりかねません。底地の面積や使用状況によっては、底地を分筆する必要性もあるでしょう。

借地権者を底地を買い取る交渉をする前には、底地の境界線と面積を正しく把握した上で検討する必要があります。

②借地権を買い取るときの条件を明確にしておく
底地の買い取りは地主と借地権者の双方の利害が複雑に絡み合っているため、更地の売買よりも難しくトラブルが起きやすいです。

だからこそ、借地権者が底地を買い取る交渉をするときには、できるだけ条件を明確にして話し合いましょう。

借地権者が底地を買い取る手順でもご紹介したように

・登記手続きの費用や期限
登記が移行されないと借地権者に所有権が移行されないため、確実に実施してもらうよう話し合う
・底地の売買代金や支払い方法
底地の代金をいつどのように支払のか明確にしておく
・借地権者が買い取る底地の面積や範囲
底地の面積はトラブルが多い部分なので、最終的な条件を書面で残す
・賃料の最終支払い日
借地権者が底地を利用している間は賃料が発生するが、いつまで支払うのか確認しておく

という部分はトラブルが起こりやすいので、明確にしておきましょう。

4-3.底地を買い取ることで固定資産税や都市計画税の支払いが発生する

借地権者が底地を買い取ると土地の所有者となるので、固定資産税や都市計画税を支払わなければなりません。

固定資産税と都市計画税は毎年1月1日時点で不動産を所有していた人に課される税金なので、8月1日に底地の登記情報を移行したとすると翌年から課税対象となります。

固定資産税:固定資産税評価額×1.4%
都市計画税額=固定資産税評価額×0.3%
※どちらも軽減措置を含まない計算方法となります

都市計画税や都市計画税は土地を所有し続ける限り毎年支払わなければならないので、税金の負担が増えることは覚えておきましょう。

5.個人間での売買は危険!底地の買い取りは専門家と一緒に進める

借地権者が底地を買い取りたいと思っても、底地の所有者は地主なので簡単に話が進まないことが多いです。

地主側に底地を売却してもいいという意思がない限り、借地権者が地主と直接交渉をしてもトラブルになる可能性があります。

また、底地の買い取りには借地借家法や民法などの法律が関わってくるので知見のある専門家が正しい知識で判断しないと、後に大きなトラブルにつながります。

借地権者が底地を買い取りたいと考え始めたら、まずは不動産会社や弁護士などの専門家に相談をして一緒に進めていくようにしましょう。

6.まとめ

いかがでしたか?借地権者が底地を買い取るときの価格や手順、注意点が把握でき、底地を買い取ろうか具体的に検討できるようになったかと思います。

最後にこの記事の内容をまとめると

借地権者が底地を買い取る場合は、限定価格が採用される(例外有)

限定価格は底地の通常価格-更地価格で算出した差額分を底地の通常価格に上乗せした価格となる

◎借地権者が底地を買い取るときの手順は次のとおり

1)底地を買い取りたいことを底地の所有者である地主か不動産会社に相談する
2)底地の査定や境界線の測定を行う
3)不動産会社などの専門家とともに買い取り価格や条件などをまとめて地主に相談する
4)地主と借地権者の双方の同意が得られたら契約する
5)地主が底地の登記変更を行い、借地権者所有の土地となる

◎借地権者が底地を買い取るときの注意点は次の3つ

1)底地は地主が所有している土地なので、必ず買い取りできるとは限らない
2)トラブルにならないように、条件や境界線を明確にしておく
3)底地を買い取ることで固定資産税や都市計画税の支払いが発生する

借地権者が底地を買い取る場合は、不動産会社などの専門家と一緒に進める

この記事をもとに、トラブルなく借地権者が底地の買い取りを進められるようになることを願っています。

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