Columnマンション経営コラム

不動産管理会社とは?依頼できる業務や失敗しない選び方を解説

2021.09.25

不動産管理会社とは?依頼できる業務や失敗しない選び方を解説

不動産管理会社とは、一言で言うとオーナーに代わりアパートやマンションなどの賃貸物件を管理する会社のことです。

もう少し詳しく説明すると不動産管理会社はオーナーに代わり

①入居者管理業務:入居者の募集や契約、クレーム対応など入居者の関わる業務
②不動産管理業務:清掃や点検などアパートやマンションなどの建物を維持管理するための業務

という2つの業務を行います。アパートやマンションなど賃貸物件の管理を長期間継続していくことはとても大変なことですが、不動産管理会社を利用することでオーナーの手間を省きながら入居者が満足できる状態を維持できるのです。

しかし、不動産管理会社にはいくつかの種類があり契約方法も1つではないので、基礎知識を得たうえで自分に合う不動産管理会社を探すことがとても重要です。

そこでこの記事では

◎不動産管理会社とは
◎不動産管理会社の役割
◎不動産管理会社と不動産仲介会社の違い
◎不動産管理会社の業務
◎不動産管理会社の3つの種類
◎不動産管理会社との契約方法
◎不動産管理会社の管理手数料の相場
◎不動産管理会社を選ぶときの6つのポイント

をまとめてご紹介します。この記事を最後まで読めば不動産管理会社とはどのようなものか理解でき、自分に合う不動産管理会社を選べるようになるはずです。

アパートやマンションの運営管理に欠かせない不動産管理会社を見極めるためにも、ぜひ参考にしてみてください。

1.不動産管理会社とは

まずは、不動産管理会社を理解する上で知っておきたい4つの基礎知識をまとめて解説してきます。不動産管理会社の役割や不動産仲介会社との違いなど、知っておきたいポイントばかりなのでぜひチェックしてみましょう。

1.不動産管理会社とは賃貸物件を管理する会社

冒頭でも説明したように不動産管理会社とは、アパートやマンションなどのオーナーに代わり賃貸物件を管理する会社のことです。

2019年に国土交通省が実施した「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査」を見てみると、約75%のマンションやアパートで不動産管理会社などの委託業者を利用し賃貸管理をしていることが分かります。

委託している業務内容を細かく見てみると、下記のように入居者募集やクレーム対応、清掃業務など多岐に渡る業務を委託しているケースが多いようです。

不動産管理会社などの委託業者に任せている業務
集金 85.1%
家賃督促 87.8%
契約更新 85.2%
敷金精算・原状回復 90.0%
クレーム対応 91.2%
入居者募集などの空室管理 84.4%
清掃 74.8%
維持管理・修繕(設備点検等) 75.5%
修繕積立金の管理 15.8%

※管理業務を受託・実施、管理業務を受託し、再委託の合計
参考:国土交通省「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査」

実際にアパートやマンションを運営管理する場合には、不動産管理会社は欠かせない存在となっています。

1-2.不動産管理会社の役割

不動産管理会社は主に「入居者管理業務」と「不動産管理業務」の2つを担います。(どの範囲の業務を任せられるのかは不動産管理会社により異なります)

①入居者管理業務:アパーやマンションの入居者募集やクレーム対応などの管理業務
②不動産管理業務:アパートやマンションの清掃や整備などの建物を管理する業務

入居者管理業務とは、入居者募集や退去サポートや入居者の問い合わせやクレーム対応など、入居者に関わる業務を担います。

不動産管理業務では、アパートやマンションそのものの管理を指し、オーナーと相談しながら清掃や修理などを行います。

どちらも長期間に渡ってアパートやマンションを運営管理していく上では欠かせない業務で、手を抜くと入居者が減り収益が下がることにつながるでしょう。

また、アパートやマンションの修繕や清掃を怠り適切な管理ができていないと劣化が加速し、気が付くと修繕費が高くなったり入居者が住みにくい環境となってしまったりします。

不動産管理会社が入居者のお世話と建物の管理を一括して行うことで、入居者とオーナーの双方が満足のいく状態を維持できるようになるのです。

1-3.不動産仲介会社との違い

「不動産管理会社と不動産仲介会社はどう違うの?」と疑問を抱いている人は多いのではないでしょうか。

不動産仲介会社は、貸主と借主の間に立ち契約や手続きを進めて成立させる会社のことを指します。不動産仲介は宅地建物取引業法という法律で

・宅地や建物の売買や交換
・不動産の売買や交換、貸借をするときの代理や媒介

を行う宅地建物取引業に該当するため宅地建物取引士の免許が必要です。不動産管理会社と不動産仲介会社を比較すると、業務内容や収益化の方法が異なることが分かります。

  業務内容 収益化の方法 免許
不動産管理会社 入居者管理業務や不動産管理業務を代行 管理業務代行として継続的に委託手数料を得る 免許不要
不動産仲介会社 貸主と借主の間に立ち契約や法的手続きを進める 契約が成立すると成功報酬として仲介手数料を得る 宅地建物取引士

不動産管理会社は管理業務を代行し委託手数料を得ますが、不動産仲介会社は契約が成立することで成功報酬を得るため、仕組み自体が違います。

また、不動産管理会社と不動産仲介会社の関係を表すと下記のようになります。

不動産管理会社は入居手続きや仲介業務など法的な業務ができないため、オーナーから委託を受けて不動産仲介会社に依頼をして入居者を募集、契約手続きをしているのです。

アパートやマンションの入居者募集や退去の手続きをしている不動産仲介会社であれば、不動産仲介会社と連携しながら業務を行っていることになります。

このように、不動産管理会社と不動産仲介会社は業務内容や役割が大きく異なるため、「同じ業務をしている会社」だと間違えて捉えないようにしましょう。

1-4.不動産管理会社として業務をするときに資格は必要ない

不動産管理会社は不動産仲介会社のように土地の売買や交換に携わる宅地建物取引業に分類されないので、特別な資格は必要ありません。

その代わりとして不動産管理業務に一定のルールを設けオーナーと入居者、不動産管理会社が双方に良好な関係が築けるように「賃貸住宅管理業者登録制度」が設けられています。

賃貸住宅管理業者登録制度では「家賃の受領事務」「契約更新事務」「契約解除事務」を基幹事務として、基幹事務を含む管理業務をしている会社が登録規定に当てはまるとしています。

登録は任意となっていますが登録された不動産管理会社は公式サイト上などで公開されるので、一定のルールや基準を満たして業務を遂行している基準となります。

参考:国土交通省「賃貸住宅管理業者登録制度」

2.不動産管理会社の大きな2つの業務

不動産管理会社には、大きく分けると下記のように「入居者管理」と「不動産管理」の2つの業務を行います。

それぞれオーナーに代わってどのような業務を行ってくれるのか、詳しくみていきましょう。

2-1.入居者管理業務

入居者管理業務とは、アパートやマンションの入居者に関わる業務です。

主な業務として

・入居者の募集や内見の案内
・入居者の契約手続き
・入居者の更新手続き
・家賃の回収
・入居者からのクレームや問い合わせの対応
・退去時の手続き

があり、不動産管理会社がオーナーに代わって行います。(実施内容は不動産管理会社により異なります)

具体的にどのような業務なのか、一つずつご紹介します。

2-1-1.入居者の募集や内見案内

アパートやマンションに空室がある状態が続くと、オーナーの家賃収益が低くなってしまいます。入居者募集をして入居者を探すのは、不動産管理会社の重要な業務です。

広告やwebサイトに掲載をして入居者を募ったり内見案内をして入居希望者のサポートをしたりします。

先ほどもご紹介したように、不動産仲介業務は知識を有する有資格者しか行えないため不動産管理会社が不動産仲介会社に依頼をして行うことになります。

第4章でも詳しく説明しますが、不動産管理会社との契約方法により入居者募集の流れが異なります。

契約方法 入居者募集の方法
媒介契約 複数の宅地建物取引業者に入居者募集の依頼ができる
代理契約 専属の宅地建物取引業者のみに依頼できる
サブリース 不動産管理会社がまとめて借り上げしているため、オーナーは踏み込めない
個別依頼 不動産管理会社の業務に入れずに、別の不動産仲介会社などに依頼

媒介契約の場合は複数の不動産仲介会社のサポートを受けながら、スムーズに入居者を探すことが可能です。融通が効く分、場合によっては別途契約手数料が発生する可能性があります。

代理契約は基本的に1社の不動産仲介会社にしか入居者依頼ができない方法です。複数の不動産仲介会社が介入しない分、入居前のサポートから契約まで一貫して任せられます。

また、入居者募集は不動産管理会社に任せないでオーナー側から不動産仲介会社などに依頼することもできますが、コストがかさむことがあります。

このように不動産管理会社との契約方法に従って、ターゲット層と一致する入居者が決まるように進めていきます。

2-1-2.契約手続き

入居者が決定したら不動産仲介会社の力を借りながら、契約手続きを行います。(不動産管理会社内に宅地建物取引業ができる有資格者が在籍している場合もあります)

契約内容が正しいか確認をしながらオーナーに代わって入居者との契約を締結し、引っ越し日を決定します。

アパートやマンションのルール共有なども行い、オーナーが関与しなくても入居者がアパートやマンションで生活を始められる状態にしてくれます。

2-1-3.契約の更新手続き

アパートやマンションは1年契約や2年契約など、定期的に契約を見直し更新するよう定めている場合が多いです。

入居者管理業務では契約更新スケジュールの管理や、契約更新に関わる書類の送付、契約更新費の入金依頼など契約更新に携わる業務を行います。

入居者が多ければ多いほど契約更新月にばらつきがあり管理が複雑になるため、不動産管理会社に任せることでオーナーの手間がぐんと省けます。

2-1-4.家賃の回収

決められた日に家賃や共益費、公共料金を回収し、オーナーの手間となる集金業務を代行します。

アパートやマンションの戸数が多いと家賃を回収し金額を参照するだけでも手間がかかるため、オーナーの負担が軽減できます。

中には公共料金や家賃を滞納する入居者もいるため、督促状の郵送や電話での督促を実施してしっかりと支払ってもらえるように促します。

2-1-5.クレームや問い合わせの対応

不動産管理会社が入居者からの問い合わせ窓口となり、クレームや問い合わせ対応をします。入居者が増えてくると騒音や駐車場のマナー違反、ゴミ出しのルール違反などのクレームが発生することがあるでしょう。

オーナーが逐一対応していると心身ともに疲れてしまうので、不動産管理会社が入居者とオーナーの間に立ちトラブル解決を図ります。

問題のある入居者に直接注意をするのはもちろんのこと、アパートやマンション内の掲示板に注意喚起をするなど工夫を凝らして入居者全員が快適に暮らせる環境を維持します。

2-1-6.退去の手続き

入居者が退去するときにも多くの業務が発生します。

・室内の原状回復ができているか立ち合いをして確認する
・退去届等の書類を作成する
・水道や電気、ガスなどライフラインの停止の確認

といった退去に関わる業務も不動産管理会社が行います。とくに、原状回復ができていない状態で入居者と連絡が取れなくなると、次の入居者が快適に住めるように回復させる費用がかさみます。

不動産管理会社が一つ一つチェックしながら手続きをすることで、オーナーの資金的な負担も減らせます。

2-2.不動産管理業務

不動産管理業務は、アパートやマンションの建物を維持管理する業務を指します。
主な業務として

・清掃業務
・設備や建物の維持管理
・点検や修理の立会い
・長期修繕計画の策定

があり、不動産管理会社がオーナーに代わって行います。(実施内容は不動産管理会社により異なります)

具体的にどのような業務なのか、一つずつご紹介します。

2-2-1.清掃業務

アパートやマンションの外観や共用施設の清掃を定期的に行い建物の美観を維持する業務です。

月に2回や週に1回など回数が決められていることが多く、入居者が共同で使用する階段やエレベーター、駐車場やエントランスなどを清掃してくれます。

パーティールームやラウンジなどの共用施設がある場合も、入居者が心地よく使えるよう定期的な清掃や整理整頓を行います。

清掃業務が含まれていない場合は自己管理を基本とし、オーナーが定期的に清掃をするか別の清掃会社に依頼するか選択することになります。

2-2-2.設備や建物の維持管理

アパートやマンションなどの建物は築年数とともに劣化していくため、建物を維持管理していくことが欠かせません。

・共用部分の電球交換
・階段やベランダなど共用部分で壊れている場所の修理
・建物を維持するための補強工事

など適宜どのようなことが必要かチェックし、必要に応じて修理を依頼します。修理にはコストがかかるためマンションの維持管理状況をオーナーに報告し、相談をしながら進めていきます。

2-2-3.点検や修理の立会い

マンションやアパートの修理を行う場合、入居者への影響やトラブル発生を考慮して責任者が立会いするのが無難ですが、オーナーが毎回立会いしなければならないとなると意外と労力がかかります。

そこでオーナーの代わりに不動産管理会社が現場へと赴き立会いをすることで、トラブルなく工事や修理を乗り切れるようになります。

また、マンションは建築基準法で法定点検が定められており、定期的に有資格者による点検を実施しなければなりません。

不動産管理会社によっては、法定点検のタイミングや手配、立会いをしてくれる場合があり、オーナーの手間が省けます。

2-2-4.長期修繕計画の策定

大規模マンションの場合、設備や性能を維持するために10年~15年に1回大規模修繕を実施しなければなりません。大規模修繕はマンション管理組合と協力しながら、どの範囲まで修繕をするのか細かく決めていきます。

数年かけて計画し実施していくため、マンション管理組合との入念な話し合いや準備、資金計画が必要です。

不動産管理会社によってはオーナーの代わりに大規模修繕計画に関わる業務を引き受けてくれる場合があり、オーナーの負担が軽減できます。

3.不動産管理会社の3つの種類

不動産管理会社には、下記の表のように「仲介業務のみを行う不動産管理会社」「不動産管理業務のみを行う不動産管理会社」「どちらもおこなう不動産管理会社」の3種類があります。

それぞれにメリットとデメリットがあるので、不動産管理会社に任せたい業務と照らし合わせながらどの種類の不動産管理会社に依頼をするのか検討する必要があります。

そこでここでは、それぞれの不動産管理会社の特徴や向いている人をご紹介します。どのタイプが理想なのかチェックしてみてください。

3-1.仲介業務のみを行う不動産管理会社

入居者の募集や契約業務のみを行う不動産管理会社は、入居者を募集する集客力があるところが強みです。

仲介業務のみに専念しているため、入居者募集のノウハウや入居予定者への対応を細かく行ってくれます。空室が増えて困っているという場合は、率先力となってくれるでしょう。

仲介業務のみを行う不動産管理会社を利用するときの注意点としては、下記の2つが挙げられます。

①管理業務をオーナー自身が行わなければならない
アパートやマンションの戸数が少ない場合はまだしも戸数が多い場合は、家賃の回収や清掃、修理などを継続して行うことはとても大変です。

だからといって清掃業務や簡易的な管理業務のみを他の不動産管理会社に委託すると、費用がかさみ収益が減る可能性があります。

②どこまでの業務を引き受けてくれるか明確にする
入居者の募集と契約のみを行う、入居者の募集や契約、退去手続きを行うなど不動産管理会社によって業務内容が大きく異なります。契約前にどこまでの管理をしてもらえるのか明確にすることが大切です。

このように、空室が出ないように入居者を募集することが主な業務となるため

・アパートやマンションの管理業務は自分でできるため、仲介業務のみを任せたい
・清掃業務などは委託しているが空室対策ができていないので、入居者の募集をして欲しい

といった場合に向いています。

3-2.不動産管理業務のみを行う不動産管理会社

不動産管理業務のみを行う不動産管理会社は、アパートやマンションを適正に管理していく技術に長けています。

・清掃の頻度や清掃方法のアドバイスや業務
・共用施設、外観などの修繕アドバイスや業務依頼
・入居者のクレーム、撤去手続き(業務に含まれる場合とそうでない場合がある)

など、建物を長時間維持していくためのサポートや業務を行います。建物は築年数とともに必ず劣化していきますが適正に管理をすることで入居者が心地よく生活できるのはもちろんのこと、修繕を最低限の範囲で抑えらえることができるでしょう。

その結果、退去者の減少や修繕費の削減につながるところが最大のメリットです。

注意点としては仲介業務のみを行う不動産管理会社とは逆で、入居者募集や入居者との契約は管理外となるところです。

入居者の募集や契約は宅地建物取引業法という法律に関わるため、有資格者が行わなければなりません。入居者の募集や契約のみ仲介会社に依頼することもできますが、契約が締結するごとに手数料がかかるので収益が見込めるのかじっくり検討する必要があるでしょう。

このように、不動産管理業務のみを行う不動産管理会社は建物管理のエキスパートなので

・入居者の募集などは任せられる仲介会社がいるので、アパートやマンションの管理のみ依頼したい
・入居者の出入りが少なく常にほぼ満室なので、管理業務のみで十分

という場合におすすめです。

3-3.どちらも行う不動産管理会社

仲介業務と不動産管理業務のどちらも行ってくれる不動産管理会社は、オーナーの手間が大幅に省けるところが最大のメリットです。

アパートやマンションの運営管理に関わる主要な業務を代理で行ってくれるため、オーナーがすべきことが大幅に削減できます。

同じ会社に入居者の募集から契約管理、そして建物管理まで一貫して依頼できるため現状が把握しやすく、管理上のトラブルも発生しにくくなるでしょう。

デメリットとしては、不動産管理会社に依頼する業務が増えるため手数料が高くなる可能性があります。管理費用が増えてしまい収益が大幅に減ってしまうようでは本末転倒なので、収支のバランスが取れるかどうか確認しておくといいでしょう。

このように、仲介業務と不動産管理業務のどちらも行ってくれる不動産管理会社は幅広い業務を全て任せられるので

・アパートやマンションの管理に時間をかけたくない
・アパートやマンションの管理業務は全て不動産管理会社に任せたい

という人に向いています。

4.不動産管理会社との契約方法は2種類

アパートやマンションのオーナーが不動産管理会社と契約する方法としては

・受託管理型
・サブリース型

の2種類があります。それぞれ契約内容が異なるため、事前に把握してどちらのほうが向いているのかチェックしてみましょう。

4-1.受託管理型

受託管理型は、不動産管理会社に入居者管理業務や建物管理業務を代理で行ってもらう契約方法です。

オーナーと不動産仲介会社が管理委託契約を締結することで、第2章でご紹介したような業務をオーナーに代わり不動産管理会社が行います。

不動産管理会社の種類によりどこまでの業務を任せるのか決められるため、予算に合わせて選びやすいところがメリットです。

デメリットとしては、収支のバランスが不安定になりやすいところです。満室状態の場合は収益があるため月々の手数料が支払えますが、空室が出始めたときに不動産管理会社への手数料が大きな負担となる可能性があります。

・入居者の選定などある程度の管理は自分で行いたい
・予算に合わせて不動産管理会社を利用したい

という場合は、一般管理契約が向いているでしょう。

入居者の募集など入居者管理を伴う受託管理契約をする場合は、さらに細かく「代理契約」と「媒介契約」に分けられるためどのような違いがあるのかご紹介します。

4-1.代理契約

代理契約とは、専属の宅地建物取引業者のみに入居者募集依頼ができる方法です。入居者募集から契約まで一貫して任せられるため、真剣に取り組んでくれる不動産仲介会社であれば短期間で成果を出せる可能性があります。

注意点は入居者の決定や契約を委任することになるため、オーナー自身が入居者選定に携われないところです。その分、入居者のターゲットや条件を明確に伝えておかないと理想と異なる可能性が出てきます。

4-2.媒介契約

媒介契約とは、複数の宅地建物取引業者に入居者募集の依頼ができる方法です。複数の会社を利用できる分多くの顧客の目に触れる機会が広がりますが、その分不動産仲介会社の取り組みが希薄になりなかなか入居者が決まらないことがあります。

代理契約とは異なり入居者決定の最終判断はオーナーができるようになっているため、自分の目で入居者を見極めたい場合におすすめです。

デメリットとしては、入居希望者のジャッジをオーナーがすることにより負担が増えてしまうことが挙げられます。

4-2.サブリース型

サブリース型とは、オーナーが管理しているマンションやアパートをまるごと不動産管理会社が借り上げる方法です。

不動産管理会社が入居者と直接契約(転貸契約)を結び入居者管理業務と建物管理業務をまとめて行います。オーナーは入居者管理も物件管理もする必要がなく、大幅に手間が省けます。

また、入居者がいてもいなくても全室借り上げてくれるため、収益が安定するところが大きなメリットです、(不動産管理会社によっては空室ができると収益が減少する場合もあります)

デメリットとしては不動産管理会社にとっては手間が増えることと空室が数多く発生したときに収益が減るリスクがあるため月々の手数料が高めに設定されていることです。

また、サブリースは不動産管理会社によって大きく条件が異なるためトラブルになることがあります。2019年に国土交通省が実施した「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査」によると

・空室が発生したときの対応
・賃料改定時のリスク
・修繕費や大規模修繕計画の対応
・契約内容変更の手続き方法や対応方法

といった部分でトラブルになることが多いようなので、契約締結前に確認しておくことをおすすめします。

・多少お金をかけてでもアパートやマンション管理の手間を大幅に減らしたい
・空室ができるのが不安なので、一定した収益が出るようにしたい

という場合は、サブリース方式を検討してみてもいいかもしれません。

5.不動産管理会社の管理手数料は家賃の3~6%前後

2010年に国土交通省が実施した「民間賃貸住宅に関する市場環境実態調査」では、不動産管理会社へ渡す管理手数料は月額賃料の3~6%という回答が約7割を占めています。

基本的には不動産管理会社に依頼する業務が多ければ多いほどコストが高くなる傾向があるため、不動産管理業務と入居者管理業務をまとめて任せるとコストがかかります。

例えば、アパート10戸分の月額賃料が100万円として5%の管理報酬だとすると、毎月5万円を不動産管理会社に支払うことになります。

サブリース方式を選んだ場合は入居率の増減によるリスクがあるため、管理手数料が月額賃料の10~20%となることが多いです。

アパート10戸分の月額賃料が100万円として10%の管理報酬だとすると、毎月10万円をサブリース委託している不動産管理会社に支払うことになります。

どちらの方法を採用しても場合によっては共用部分の修繕費や退去後の原状回復費を支払わなければならないため、長期的な視点で一定の収益を維持できるのか考慮しながら不動産管理会社を決める必要があるでしょう。

参考:国土交通省「民間賃貸住宅に関する市場環境実態調査」

6.不動産管理会社を選ぶときの6つのポイント

最後に、不動産管理会社を選ぶときのポイントとして

・どの範囲の業務を行ってくれるか
・地域密着型で集客力がある
・管理している物件の入居者率が高い
・管理している物件の手入れが行き届いている
・専属の担当者が用意されて、常に連絡が取れる
・トラブル発生時のために保証会社と連携している

という6つの項目があります。納得のいく不動産管理会社を選ぶためにも、ぜひ参考にしてみてください。

6-1.どこまでの業務を行ってくれるか

まずは、不動産管理会社がどこまでの業務を行ってくれるのかしっかりと確認しましょう。第3章でもご紹介したように、不動産管理会社には「仲介業務のみを行う」「不動産管理業務のみを行う」「どちらも行う」という3つの種類があります。

どの種類に当てはまる不動産管理会社を求めているのかにより携わる業務の範囲が大きく異なるため、不動産管理会社の種類を決めてから選ぶことがおすすめです。

「仲介業務のみを行う不動産管理会社を選びたい」と的を絞れば、どの不動産管理会社も同じ業務を行ってくれるとは限りません。

入居者募集から契約までを行う会社もあれば、入居者募集から契約、退去までを併せて行う会社もあります。

・どのような業務を不動産管理会社に任せたいのか
・負担や悩みだと感じている業務はどんなことか

考えて、それをカバーできる業務を担ってくれる不動産管理会社を選びましょう。

6-2.地域に根付いていて集客力がある

不動産管理会社に仲介業務を任せたい場合、アパートやマンションがある地域に密着していることが大切です。

2016年に株式会社マンションマーケットが実施した「物件選びに関する実態調査」によると、賃貸物件を検討するときに最寄最寄り駅からの所要時間を重視している人が多いことが分かりました。

他にも、ランキング上位には周辺施設や通勤、通学方法などが入っており周辺の環境を重視している声が多いです。

賃貸物件を選ぶときに重視したいポイントは?
1位 最寄最寄り駅からの所要時間 21.4%
2位 価格 17.1%
3位 通勤・通学手段や所要時間 15.5%
4位 間取り 13.9%
5位 周辺施設 7.0%

参考:PRTIMES「物件選び、最も重視するポイント第1位は「最寄り駅からの所要時間」

このような入居希望者のニーズに応えるには、マンションやアパートがある地域に詳しくないと物件をアピールすることができません。

当たり前のことですが、入居希望者を募り契約まで持っていく集客力がないと空室が増えてしまい仲介業務を依頼しているのにもかかわらず収益が下がることになります。

だからこそ

・アパートやマンションがある地域に根付いている不動産管理会社を検討する
・アパートやマンションがある地域に詳しく集客力がある不動産仲介会社と連携している

という2つのポイントをチェックして、入居者アップや空室対策につながる不動産管理会社を選びましょう。

6-3.管理している物件の入居者率が高い

不動産管理会社の実績を確認するためには、不動産管理会社が実際に管理している物件を見てみることがおすすめです。

とくに複数の物件で一定の入居者率を維持できている場合は

・集客力のある入居者募集ができている
・退去者が出ないように建物管理や問い合わせ対応ができている
・トラブルが少なく安定した運用管理ができている

と考えられます。仲介業務をしている不動産管理会社である場合は、複数の管理物件で入居者率が高いとそれだけ集客力があると言えるでしょう。

また、不動産管理業務を行っている不動産管理会社の場合は、空室が出ないように入居者満足が高い状態をキープできていると考えられます。

不動産管理会社が管理している物件の入居者率は業務の良し悪しを判断する一つの基準になるので、ぜひ確認してみてください。

6-4.管理している物件の手入れが行き届いている

不動産管理会社がしっかりと業務をしてくれるか確認する方法として、管理している物件の手入れが行き届いているのか確認してみるのも一つの方法です。

清掃業務など不動産管理業務をしてくれる不動産管理会社の管理物件を見て

・アパートやマンションの共用部分が汚れたままになっている
・長期間放置されているゴミや掲示物が見受けられる
・駐車場や駐輪場の手入れが行き届いていない
・共用部分の電球が切れたままになっている

といった状態になっている場合は、管理が行き届いていない可能性が高いです。しっかりと管理ができない不動産管理会社に依頼してしまうとコストだけがかかり、入居者の満足度アップや新規入居者が魅力的に感じる物件にならないでしょう。

どの程度力を入れて不動産管理業務をしてくれるのか見極めるためにも、事前に確認して検討してみてください。

6-5.専属の担当者がいて常に連絡が取れる

2019年に国土交通省が実施した「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査」によると、不動産管理会社とオーナー間のトラブル内容として下記のようなものが挙げられています。

不動産管理会社とオーナー間で多いトラブルの内容
滞納家賃が発生し、家賃が適切に入金されない 24.8%
入居者からの修繕などの要望対応に手間とお金がかかる 20.9%
賃料・敷金などが、管理業者から入金されるまでに時間を要する 12.8%
管理業務関する認識が管理業者間で異なり、期待する対応がされていない 8.0%
管理業者がどこまで対応してくれるのかよくわからない 7.1%
業務に関する報告がなく、適切に対応しているか把握できない 6.2%

参考:国土交通省「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査」

内容を見てみると、入金にかかわるトラブルと業務ができているのか把握できないというトラブルが多いのが分かるでしょう。

このようなトラブルが起きたときに常に連絡が取れる担当者がいないとなかなか解決できず、困ってしまいます。また、専属の担当者がいれば密に連絡を取り合い、入金や業務遂行に関するトラブルを未然に防ぐことも可能です。

不動産管理会社によっては問い合わせデスクはあるものの専属の担当を設けてくれない場合があるため、できるだけ専属の担当がいる不動産管理会社を選ぶのがおすすめです。

6-6.トラブル発生時のために保証会社と連携している

アパートやマンションを運営管理するときに、一番困るのが家賃滞納です。多くの入居者が家賃滞納をしてしまうと収益がなくなり健全な運営ができなくなるため、家賃滞納に備えて家賃収入を保証する家賃保証サービスというものがあります。

不動産管理会社によっては家賃保証サービスを用意しており、万が一滞納があった場合にも適切な金額を支払えるようにしています。

家賃保証サービスはオーナー個人で加入できますが、家賃の回収や延滞金の督促を不動産管理会社に任せている場合は、不動産管理会社側に加入してもらうほうが安全です。

「家賃が振り込まれない」というトラブルを避けたい場合は、不動産管理会社が家賃保証サービスに加入しているかどうかを目安にしてみてください。

7.まとめ

いかがでしたか?

不動産管理会社とはどのようなものか把握でき、自分に合う不動産管理会社を検討できるようになったかと思います。

最後にこの記事の内容をまとめてみると

◎不動産管理会社とは、アパートやマンションなどのオーナーに代わり賃貸物件を管理する会社のこと。

不動産管理会社が入居者のお世話と建物の管理を一括して行うことで、入居者とオーナーの双方が満足のいく状態を維持できるようになる。

◎不動産管理会社と不動産仲介会社の違いは次のとおり

  業務内容 収益化の方法 免許
不動産管理会社 入居者管理業務や不動産管理業務を代行 管理業務代行として継続的に委託手数料を得る 免許不要
不動産仲介会社 貸主と借主の間に立ち契約や法的手続きを進める 契約が成立すると成功報酬として仲介手数料を得る 宅地建物取引士

◎不動産管理会社の主な業務は次のとおり

1)入居者管理業務:入居者の関わる業務をオーナーに代わり行う
・入居者の募集や内見の案内
・入居者の契約手続き
・入居者の更新手続き
・家賃の回収
・入居者からのクレームや問い合わせの対応
・退去時の手続き

2)不動産管理業務:アパートやマンションなどの建物の維持管理をオーナーに代わって行う
・清掃業務
・設備や建物の維持管理
・点検や修理の立会い
・長期修繕計画の策定

◎不動産管理会社の種類は次の3種類

1)仲介業務のみを行う不動産管理会社:入居者の募集など仲介業務に関わることのみを委託できる
2)不動産管理のみを行う不動産管理会社:建物の維持管理のみを委託できる
3)どちらも行う不動産管理会社:入居者管理から不動産管理まで一貫して委託できる

◎不動産管理会社との契約方法は次の2つ

1)受託管理型:不動産管理会社に入居者管理業務や建物管理業務を代理で行ってもらう契約方法
2)サブリース型:オーナーが管理しているマンションやアパートをまるごと不動産管理会社が借り上げる方法

◎不動産管理会社の管理手数料は委託管理型で月額賃料の3~6%、サブリース型で月額賃料の10~20%程度

◎不動産管理会社を選ぶときのポイントは次の6つ

1)入居者管理業務や不動産管理業務など、どの範囲の業務を行ってくれるか
2)入居者募集を委託したい場合、地域密着型で集客力がある
3)管理している物件の入居者率が高い
4)管理している物件の手入れが行き届いていて、きれいな状態が維持できている
5)トラブルを回避するために、専属の担当者と常に連絡が取れる
6)トラブル発生時のために家賃保証サービスの保証会社と連携している

この記事を参考に不動産管理会社の役割や重要性が把握でき、自分に合う不動産管理会社を選択できるようになることを願っています。

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